開発者の言葉

この度、当社が開発したこの PsyKarte(サイカルテ)AI を発売することができ、大変嬉しく思っています。この製品の唯一無二の価値は、エンドユーザーである医師自身が、現場の感覚をもとに「精神科を"知っている"AI」を作り上げていることだと信じています。

画面とキーボードを見ながらでなく、患者さんの目を見ながら話すことができる。精神科・心療内科は特に面接の時間も長いことが多く、診療録の分量も多くなりがちで、かつ精神科に特有の診断書、医療文書も多数存在します。私自身も心療内科医として日々の診療にあたっていますが、カルテや診断書作成といった「書く」仕事に追われ、電子カルテの画面を見ながらキーボードを叩いている時間が多く、肝心の患者さんとの関係構築——患者さんと向き合い"患者の声を聴く"時間——が削られていく現実に直面していました。そして、そうして苦労して"書いた"多くのデータが有機的に結び付くことなく、まさに「塩漬け」になっている、という損失でした。これは医療DXとAIによって解決すべき喫緊の課題だと思っていました。

昨今のAIの台頭によって、だいぶ我々の生活も様変わりしています。既存の汎用AIは便利ですが、精神科・心療内科の診療場面での「ニュアンス」——独特の精神科症状学や、漢方まで含めた複雑な薬剤名——までかゆいところに手が届くように理解してくれるわけではありません。精神科での問診やカウンセリングなどの記録は、「文脈」が大事にされます。だから私は、自分自身の手で、精神科・心療内科の"統合的な"診療サポートに特化した、この "PsyKarte AI" をつくることにしました。

AIによる医療DXが、医師や心理士を"医療文書残業"から解放する

この PsyKarte は、カルテのAI音声入力にとどまらず、それによって構築された患者診療データベース情報を用いることで、精神科に独特の各種診断書、紹介状などのドラフトをフォーマットに合わせて自動作成することができ、医師は最終確認をして診断書のサインをするのみ、ということが可能になります。これまで何度も同じ内容を違った診断書・文書に書き直す時間や手間を大幅に削減することができ、日々の診療に変革をもたらします。

治療の効果を数字で"見える化"する、ePROによるMBC

従来より用いられている質問紙法による心理検査(患者報告アウトカム:PRO)は、紙のまま保存したままだと、採点に手間がかかり、過去のスコアと比較して治療のアウトカム評価に用いるのには大変不便でした。この患者報告アウトカムを電子的に取得する(ePRO)ことによって、患者さんの症状変化を抜け漏れなく拾うことができ、採点も自動化され、かつ経時的グラフにすることで治療の効果も判定でき、患者さんに視覚的に提示してフィードバックすることで、患者さんの治療の動機づけや、患者さんが気づかない変化もとらえながら、最適な治療方法の選択などに役立ちます。また、患者さんにスマホ・タブレットなどを用いて入力してもらうので、医療者の手間もかけずに済みます。

こうしたePROを使い、かつそれを患者さんにフィードバックすることによって、治療戦略を構築し実際の治療に生かしていくこのアプローチは "Measurement Based Care(MBC)" と呼ばれています。このMBCは患者さんの臨床的アウトカムを実際に改善することがRCTで証明され、近年脚光を浴びており、最新の学会ガイドラインにも新たに取り上げられるようになりました。さらに、患者さん自身の症状を診察の事前にePROで入力してもらうことから、診療の効率化・時間短縮にもつながるかもしれません。この PsyKarte AI は、従来の質問紙をePROにすることにより、このMBCを手軽に実現する装備を備えています。

さらにこのePROによるデータ収集と、薬剤などの治療を同時にデータベースに入力し、AIに解析させると、治療アウトカムデータが取得でき、より良い治療戦略の立案や、学会・論文での発表などにも応用可能となり、診療のポテンシャルを最大限に高めることができます。

この PsyKarte AI によって、カルテや医療文書・診断書はAIが下書きし、治療の効果は数字で"見える化"することができます。先生方が本来の臨床に集中できる時間を、一秒でも多く取り戻すことができ、診療効率が上がり、画面ではなく患者さんの目を見て向き合えるようになれば、望外の喜びです。

今後もまだまだ鋭意開発を進め、さらに機能を充実させていく予定です。

守口 善也株式会社サイコイノベーション 代表 / 医師・医学博士

1996年 東北大学医学部卒。以降、国立精神・神経センター国府台病院 心療内科、Boston College IASL、MIT McGovern Institute for Brain Research、MGH、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所/IBIC 室長、群馬大学医学部 精神科リハビリテーション学講座 教授、Lundbeck Japan 開発本部メディカルアフェアーズ部長などを歴任。日本心身医学会 石川記念賞、同学会 池見賞、American Psychosomatic Society Early Neuroscience Award ほか受賞歴多数。現在は横浜メンタルクリニック戸塚で心療内科医として勤務する傍ら、株式会社サイコイノベーション 代表取締役として PsyKarte AI を開発。 LinkedIn →

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